2020年7月3日金曜日

版下絵画とコピー機による多色版画



世界的に知られる北斎の「神奈川沖浪裏」図。これは版画なので、北斎の原画は存在しない。
あたりまえのことであるが北斎の肉筆画ではなく、北斎の版下指示による印刷物である。
和紙に描かれた原画は裏返され直接、骨版の版木に糊付けされ、彫師は原画ともども彫刻刀で彫り、不要部分は版木の屑として捨てられる。
それでは骨版のない部分輪郭線のない部分は多色刷り版画としてどのように合体させたのだろうか?と考えると、原画には薄墨で波の陰影や空の雲が描かれていたと想像できる。
骨描き部分と色面部分の二種の原画=版下が北斎自身によって紙に描き起したのか、あるいは、彫師が原画から、まず版木に原画を貼る前に骨版だけトレースしたのか?はわからない。
原画は色分けされた彩色画であったかどうかはわからないが、廃棄されてしまう原画に丁寧にタブローのごとく彩色したとは思われない。
墨によるモノクロの原画とともに、片ぼかしの領域や方向の注釈指示や色指示をした版下と考えるのが妥当だろう。

アドビ・イラストレータ―が登場し、デジタル版下が当たり前の今、少し前の紙による版下を経験してきた者は以上のように北斎の版画について考える。
























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富嶽三十六景
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富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 
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