2019年4月19日金曜日

190419 戌の日




朝日が差し込み始める6時になってしまったので、もう寝なければと思ってソファーでうつらうつらしていると新紙幣で発表された肖像写真反転の津田梅子さんがあらわれて、

「何も問題ないわよ」

と言ったので、2時間もたたないうちに目が開いた。
と、その瞬間に、そうか!とすべてのことがクリアになった。

「だって、私が毎朝鏡で見ている顔は、この顔なのよ。
写真に撮られた像は、私じゃない人が私だと言ってる像なのよ。それに、あなたが今見てる世界だって網膜で上下反転しているし、それをまた脳内で反転させて認識してると思ってるでしょ。
肖像権云々というなら、本人が問題ないと言ってるから問題ないのよ。」

と梅子さんは続けた。

「だってそうでしょ。権利というもんはだいたい当事者でない人たちが騒ぎ立てたりするものなのよ。他者によって作られるものなのよ。」

「『日本を含む多くの民主主義国家では、憲法に「表現の自由」が規定されており、一般的には、肖像権より表現の自由が優先される場合が多い。』とwikiにも書いてあるわ。
だからむしろ私の写真を撮ったカメラマンさんと造幣局の間に発生する問題なのよ」

「菅さんも、<この像は津田梅子さん本人が毎日、鏡で見ていた津田梅子さんの像にするため、肖像写真を反転しました。>と説明すれば何も問題ないのよ。

私が見ている私と、あなたたちが見ている私は別なのよ。

だけど、こう考えてみて。
私が見ている鏡像と、あなたたちが見ている鏡像の反転した肖像写真を、脳内で合成すればホログラムのように立体的に見えてこない?
これはステレオ写真とは違う立体視だけど、私はこれを社会的ホログラムと呼んでいるの。」


そう言うと梅子さんはまぶしい朝日の中に溶けていきました。

おしまい