Study of "Double Embryo" 01,02 /1986 03.SEP/paint marker on paper/28x21.6cm(sheet size) Kiminari Hashimoto |
Study of "Double Embryo" 05 /1986 10.SEP/ pen ink on paper/23.9x23.3cm(sheet size) Kiminari Hashimoto |
Study of "Double Embryo" 03,04,06,07 /1986 10.SEP/ paint marker on paper/ 23.9x23.3cm(sheet size) / Kiminari Hashimoto |
二重人とdouble embryo
ベトナムでのニュースによって合体した人間(生物的な異変エラーによる存在)を知って、概念的な図示を試みたのであるがその布石は絵画平面上での二重人に対する考察であった。
二重人については、レオナルドのアドレーションで図示された二人セットのイメージについての誰かの論文によるものであったが、それはキリスト教的な、聖書に書かれている?「この世で自身の分身的なもう1人の他者が存在し、我々はその分身を求めて生きている。」といったような内容のものだったと思う。(キリスト教でなく、ギリシャのプラトンによる考察だったかもしれない)
ダヴィンチの絵に見る二重人は、明らかに合体したよように見える聖アンナとマリア図のように、精神的な遺伝的な様相を図示しようとしたように思えるのだが、一方で、そのアイデアを思いついたのは構図の描き直し、あるいはデッサンの修正時において、偶然二つの顔が並んでいた時に思いついたかもしれないということを、今朝web上で見たレオナルドのDrapery study on red paper 赤い紙に書かれたドレスのシワの習作を見て考えた。
この赤い紙に描かれたドローイングはレオナルド初期の代表作とされる受胎告知のマリアの衣服の習作で、布のシワを研究しているが、(それは地形図、地質図のようなものであり水流図にも見られる宇宙観をも表している)モデルの着衣を前に描いたのではなく、人体の入っているように布のシワを作って、人体なしでしばしば衣服のしわを追求していたという伝聞がある。
人体のない状態での着衣のシワを描き、自然な状態の着衣に見えるように上半身、胸から上の頭部などはモデルを前にせず、想像で描き、合体していったようにこの赤い紙の習作は見える。
このように部分部分と、宇宙の、世界の真理追求を全て一つの一点のタブロー作品で示そうとしたために完成された絵画が少ないということにならざる負えなかったのではないかと思うのだが、いくつもの枝の別れた個々の専門領域に対する長大な研究を全て入れ込んだ一つの世界像として絵画作品に込めるという意志が見える。
構図を決めて単純に完成に向かって機械的に仕上げる方向に向かうペイントとは異なり、世界の全てを説明するためのイラストレーションの集積であり、個々の領域の観察全てを詰め込んだ構築としての人工的なモニュメントである。
このことがレオナルドの絵画を不気味なまでの雰囲気を醸し出しように見える所以である。
偶然、修正したために現れた二つの頭部、修正前の線と修正したためにできた二つの頭部。ADORATIONに見られる2人セットの人物群もこのように修正前と後の二つが重なって偶然表象されたこの効果は、アニメーションのように動作と時間の経過を表してもいる。
これらのことを制作途中で「発見」したレオナルドは、あえて修正前後のイメージをどちらかに選択、決定して消すのではなく、どちらも残すことで絵画制作時に発現した効果として実践していったのではないか。
2019年12月3日
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Another work in '80 / 1986-87 Art work :Kiminari Hashimoto
2019年2月8日
2017年9月17日