2018年1月13日土曜日

架空の小説「養老院サンバ」


養老院サンバ


三が日がすんで大阪から金沢へ戻ってくると街はすっぽり白い塊に覆われた見慣れない風景になっていた。六畳一間の下宿は、障子を開けるとガラス窓の向こうは白い塊の壁で空が見えない。初めての白い世界にウキウキ気分も、空が低い日本海側の冬の洗礼は日を追うごとにセンチメンタルな気分にさせる。海を見に行こうと思い立ってあてもなく電車に乗るが、降り立った駅はすでに闇が近づいていて新雪がかくす道なき道を勘を頼りに歩き回る。たどり着いた海は、天使の梯子がはるか水平線にスポットライトをあてた舞台セットのようで、僕の心はますます陽水になる。

三か月前にはMiG-25が超低空飛行でF-4JEの追尾をかわし函館空港に強行着陸した。
クラスメイトは日本からソ連へ行くのも亡命と言うのかと教授に問う。

降り積もった新雪と黒い海。
自分以外この世には誰もいない。
「未知との遭遇」の条件は整った。


日本海の海岸であいついで神隠しが起こっていた。
しかしそれを知るのは二十数年後のことだ。


あの時一人で日本海にいた僕は、なぜ拉致されなかったんだろう。


1977年はこんな感じではじまった。




そして、その40年後の年も終わろうとしている。
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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B3%E4%B8%AD%E5%B0%89%E4%BA%A1%E5%91%BD%E4%BA%8B%E4%BB%B6


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https://pavlovsdogxschrodingerscat.blogspot.jp/2017/11/171115-40-years-ago.html