2011年5月31日火曜日

Painting way of the pearl luster on glaze

パールラスター(真珠色)の発色とその彩色方法
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パールラスター(真珠ラスター)の発色には様々な求めるべき効果により彩色方法を変えなければならない。

第一にその発色の大きな違いは当然のことではあるが生地の本焼成における方法に左右される。酸化焼成と還元焼成の違いである。
同じ土(生地、ここでは磁器土)において酸化と還元により、その生地の白さが異なる(酸化は黄みをおびた暖色系の白であるが還元においては青みのある白)一般的な現象がラスター彩色においても同様に発色に影響する。それはパールラスターが透過性のある絵具である事によっている。
上絵焼成において、その絵具が透過性に左右されなければ本来その変化は酸化、還元による違いなく同発色を示す。(白ラスター、グレーラスターの場合)

● ラスター絵具の種類について
浪速金液においては真珠ラスター、白ラスター、グレーラスターという3種において試験した結果が図版である。他にも色を混ぜたカラーラスターが多種あるが、ここでは白に近い発色のみ検証するため、カラーラスターについては省略する。
浪速金液における真珠ラスター(ここでは品番L-20であらわしているもの)であるが、その一種においても彩色方法により発色は異なる変化を見せる。
* ここでの文中番号、名称は2009,7/10 浪速金液による試験に基づき示される。

● 彩色方法とその発色(1)~図中番号L-20,L-20-2において~
同じ絵具であっても原液(L-20)をそのまま塗る場合とラスターオイル(K-5)を混入する比率により発色が異なる。今回のテストではL-20とK-5を1:1の割合で混合塗布した場合と1:1.5で混合塗布した場合。また、L-20-2とK-5を1:1で混合塗布した場合と1:1.5の割合で塗布した場合である。図版を見ればわかるように1:1での混合比ではどちらもラスター独特の虹色効果が強く表れる。L-20に対してL-20-2はより弱くではあるがこの発色効果が見られる。1:1.5の混合比の場合では虹色効果は見られなくなる。つまり虹色効果を必要とせず全体にむらなく白っぽい真珠のように発色させたい場合はこの混合比(ラスター原液:ラスターオイル=1:1.5)を用いなければならない。

● 彩色方法とその発色(2)~白ラスター、グレーラスターの場合~
(1)と異なる液(白ラスター)での使用では原液とオイルの混合比率によって同様の効果が見られる。白ラスターの場合は原液においてもL-20と比較すればL-20よりも虹色効果は弱い。テストピースを比較すればL-20をラスターオイル1:1.5での混合比のものと白ラスター:ラスターオイル=1:1のものの発色はほぼ同じようになる。
グレーラスター(L-92)の場合は、より青みが強く発色するが、その発色はパラジウムの発色に近くなりパール発色を求めるものとしては不向きである。

●彩色方法とその効果
以上で述べたようにラスター特有の虹色発色効果においては、ラスター原液と薄め液であるラスターオイルとの混合比が影響するが、彩色する道具によっても様々な効果をもたらす。
筆による彩色においては、筆に含んだ液が釉薬で焼成されたグレーズ表面をすべるように塗るのであるから、筆の毛一本一本による線状の液たまりに沿った状態で虹色発色する。時にその線状の筆痕はムラに見えるため、そのムラをなくすべく塗った後に息を吹きかけ筆の毛による線状のたまりを拡散させる方法が用いられる。
また、筆痕による線状のたまりを人為的なムラと認識させないために塗布した後、スポンジなどでたたいてムラを拡散させる方法も用いられる。この場合は、スポンジでたたいた痕にそって点状に虹色効果が得られるためオパールなどの天然石に似た効果になる。

以上は虹色効果を積極的表現として用いる場合の方法であるが、そういった表現を好まぬ場合、つまりそういった虹色効果が人為的なムラとして、表現として排除される場合には(1) (2)で述べたように原液対ラスターオイルの比率を変え、よりオイルを多くし原液を薄めることで虹色効果の発現は抑えられる。このとき原液をオイルで薄め、なおかつ液を薄く均一に筆による塗布技術が求められるのである。また、原液をオイルで薄めることよりコンプレッサーを用いた吹きつけによる塗布が容易になる。吹きつけによる塗布はより均質にラスターを塗布できることから筆による塗布より適している。

真珠貝の貝殻内側に見られる虹色効果と真珠の玉に見られる白っぽい均質な輝きのそれぞれの表現の違いは以上の方法の使い分けによって得られるのである。

<2009,07/11> Kiminari Hashimoto