2013年10月15日火曜日

構造的な色

画面の上で色を作るということは絵具としての彩色、塗装とは異なる。
絵具というのは物質の化学変化の状態を時間経過を並列させて共時的に見せるということである。
同一画面で、視られる時に同時間に見せるということ。(シュレディンガーの猫)
視ている時にのみ存在する、作者によって仕組まれた物質の時間的経過の並列。

L'ANNUNCIAZONE   /1984 / Kiminari Hashimoto / 130 x 130 cm / Oil, pigment(Iwaenogu) on rusted aluminium / 


"L'ANNUNCIAZIONE" (1984年制作)では、以下の方法でアルミ地に暗灰色の面を作った。
油性インクマーカーにより図象を描く。あるいはアクリルラッカーによりシルクスクリーンで図象を印刷。
エッチング版画用の塩化第二鉄溶液を塗布。
油性インクマーカーで描かれた部分、あるいはシルクスクリーン印刷以外の部分を腐蝕。
変化の後、アクリルラッカーで印刷された部分をシンナーで洗い落とす。
これは、画面上で色を作るというよりも、反射の異なる面を作るという目的に拠っている。
反射の異なる面を作成したその後に、岩絵具(番目の異なる数種の岩群青)をカシュー(人造漆)に溶きピクセルを描く。

光琳の《紅梅白梅図屏風》の中央部の川に明礬によるマスキングが使用されていることを知ったのは20年以上たって後のことである。




*明礬によるマスキングと硫化という現象を用いて定着された光琳筆《紅梅白梅図屏風》の中央の川

まず川をイメージした面に薄い銀箔を張り、明礬液で流水紋の図柄を描く。その上から硫黄の粉末をかけて3日間寝かせておくと、明礬液で描いた図柄以外のところの銀が硫化されて黒い硫化銀となる。
明礬液をマスキングとして使用し、それ以外の部分を画面上で直接化学変化を起こし色として定着する。その現象を定着する。
(2011/12/19 NHK「極上美の饗宴」と2012/02/05 NHK「日曜美術館」で報告された光琳作《紅梅白梅図屏風》の中央の川についての科学的調査の結果による。)