未明に見た海外ドキュメント、一匹狼とカラスの話。
生態系の長である狼も、一匹狼では猪に負かされる。
何日も獲物にありつけない一匹狼は生存の危機に瀕する。
一匹狼と付かず離れず行動を共にする烏はその状況を見て、狼に兎がいる場所の情報を流す。
カラスは自らハンティングを行わず、狼に情報を提供するだけでハンティングをするのはあくまで狼。
兎を捕らえた一匹狼はすべてを食べつくさず、おこぼれを情報提供者のカラスに残す。
文明に囲われた領域で羊の番人は家畜の羊の群れを牧羊犬と管理する。
未成長の牧羊犬の子犬は文明の外側、狼の領域に遊ぶ。
一匹狼は牧羊犬に成長しない段階の子犬を狙う。
子犬は文明の領域の外で生存の危機に直面する。
文明という囲い込み領域に逃げ帰った子犬は九死に一生を得る。
一匹狼は文明という境界に侵入するが子犬を捕らえることはできない。
牧羊犬と羊の番人と羊の群れは文明の外側の危機を知っている。
羊の番人は事の成り行きを知るが、狼を駆除しない。
羊の番人は狼を駆除しつくさず、かといって近づきすぎず、狼と人との関係は互いの存在を知らしめる状態を保つ。
羊の番人は狼を駆除することで起こるであろう災いを知っている。
この物語に鹿や貂、アライグマは登場しない。
鹿や貂、アライグマや街中に侵入する猪の物語は、狼が駆除されつくした別の、この島の物語。
このドキュメントから「経済」と訳される英語のEconomyのラテン語語源、flugalitasからflugalが意味する「共同体の運営」という意味が見えてくる。また、経験主義に過信し慣れ親しんだ事業にのみ巨額投資で破綻に追い込まれるかつての大企業と、他者の経験を吸収し巨大成長するシリコンバレーの多国籍企業体の対比が思い浮かぶが、これはまた別の話。