2012年8月19日日曜日

Kim Jung Gi 氏の視界

Kim Jung Gi 氏のスケッチブックに描かれた車中の空間について、その絵画作用空間を図式化してみる。


トップビューからみた車は四角でなく、スケッチブックの綴じ線に向かって台形になり、スケッチしている本人のリクライニングシートからの視点は扇形に大きく後ろに湾曲し、作者は車の外に飛び出ている。
フロントガラスから見る前方トラック。作者の進行方向正面の視線が、運転手~後部座席へと左側に移動するにしたがって車中のインテリア空間は台形に変形してゆく。
作者の足の位置、カーナビのある下あたりのダッシュボードがこちら側にせり出している。

人の視界は180度より少し少ないが、絵を描こうと対象に注視するときの視界はさらに狭まるだろう。
作者がこの狭い車中のパノラマビューを描くとき、眼球あるいは首は左側に向かって移動しているだろう。
カメラのレンズでこの視界を捉えようとすれば20mmレンズが必要だろう。
ただレンズで捉えた場合、この視覚と同じになるとは思われない。各方向への消失点が強調され視点から遠ざかるものはさらに小さく図示されるであろう。

この何気ない風景の、しかし不思議な遠近感を持つパノラマビューは作者の視点により無意識に調節されながら違和感なく見えるように図示され、オーディエンスはその視界を追体験することになる。
そして画中の個々の部分を追いかけながら移動する視線は、四角いはずの車中空間が歪んで変形した絵画内空間を体験することになる。

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