2016年10月19日水曜日

トリのこと ~愛知にくるトリさるトリすむトリ~


「ねえママ、トリさんはゲイジツのソザイなの?」






 鳥については名古屋に来てからより付き合いが深くなった。
なにせ、初めてグラフィックの仕事としてデザインしたシンボルマークは鳥類イラストレーションで高名なジョン・ジェームス・オーデュボンのコレクションシリーズだった。
まだかろうじてアメリカへの輸出があった80年代初頭の瀬戸。磁器で作られた精巧な鳥の置物は剥製を代用するインテリアアクセサリーとして、かの地では需要があったのだ。
精巧な生態模型、立体花鳥風月としての置物。BoehmやKaiser、LeftonやGoebel、Sadekなどのブランドがこぞって新商品を発表し、それらのいくつかの下請けメーカーとして「瀬戸ノベルティ」が発展した。
少なくとも85年のプラザ合意までは。






 そんな関係で原型を作るためのイメージスケッチを描かなくちゃいけなかった僕は500㎜レンズを買って野鳥観察を始めた。だけど実はそれは口実で、観察それ自体に興味があったのだ。
そんな事をしていたから、いろんな人が鳥を持ってやってくる。倉庫屋根裏の巣から落ちたムクドリやスズメのヒナを持ってやってくる。






また、ある時は道端にうずくまって飛び立てないインコやカナリアを持ち帰ってはアパートの部屋で放し飼いにする。成鳥のインコやカナリアはまだいいが、ヒナを育てるのは大変だ。鳥の体温(40~42℃)は人間のそれよりはるかに高い。スズメは一番高く42~3℃。中途半端な愛玩では結局、死なせてしまう。





解剖途中のスズメが冷蔵庫にいて、泊りに来た弟が扉を開けてビックリする。




毎週末のように県内あちこち撮影に行く。

一人で悪戦苦闘していた時はブラインドまがいのもので擬態したり庄内川にゴムボートを牽いてカワセミに近づこうとしたりと苦労したが、車で行くようになると下げた窓ガラスに大砲の先をのせ手元でファインダーをのぞく2点支えでの車中撮影は、ブラインド不要で鳥に近づける便利な方法だと気付く。













「珍しいオオカラモズが鍋田にでたから、明朝、出発するまでにおとりのデコイを作れないか」と、いつも誘ってくれる野鳥の会の人に頼まれる。その人とは毎週のようにあちこち運転して連れて行ってもらっていたので、というより興味が大きく徹夜で作ったのだが、人間を対象にした制作でなく、鳥相手に、鳥を騙すための制作は人間相手より厳しい目で試されるようでワクワクした。

http://pavlovsdogxschrodingerscat.blogspot.jp/2016/10/jan-1984.html

「バードウォッチング」は何か自然保護活動とセットになった慈善活動的な印象があるが、「野鳥撮影」はむしろハンティングだ。鍋田のあぜ道を何台もの4WD がタイミングを計って一斉に前進する。獲物を追い詰める猟のようだ。

























3年周期で渡ってくるトリを見ることなく、去って行ってしまった。いや実際、毎日のようにSNSにアップされる画像を見てると何度も見たような気になってしまい、知人から案内が来てもご無礼してしまった。「お祭りなんだから参加しなければ楽しくないわよ。」と声が聞こえてくるが、どうも人が多いところは苦手だ。
イベント後半、にわかに話題になり対応に追われているキュレーターさんが毎日の夕方ニュースに登場する。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161017-00000081-asahi-soci

希少動物の鳥、無許可で芸術作品に 愛知の国際芸術祭
朝日新聞デジタル 10月17日(月)21時2分配信

 愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」の参加作品に、「種の保存法」で義務づけられた環境相許可を取らずに調達した鳥が3羽含まれていたことが分かった。この作品は素材として約100羽の小鳥を4階建てビルに放って展示し、約20羽が死んだり外に逃げたりしていた。
 問題となった鳥は、オーストラリア原産のコキンチョウ。同県豊橋市で展示中のブラジルの芸術家の作品に含まれていた。種の保存法で「国際希少野生動植物」に指定され、譲渡には環境相許可が必要。3羽はトリエンナーレ実行委員会が7月末、県内のペットショップから購入したが、その際、許可手続きをとらなかったという。
 今月12日、保護団体の指摘で発覚した。実行委の照会にペットショップは「国内繁殖のペット用なので対象外だと思った」。国内繁殖の個体はネットでも広く売買されており、手続きなしで譲渡される事例も多いとみられる。
実行委は3羽を保護団体に預けている。担当者は「やはり芸術作品で生き物を扱うのは難しい」と困惑している。(斉藤太郎)
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社会制度的には、動物取扱責任者を置き動物取扱業に登録されたイベントであるという。
作者は豊橋の展示についてどう考えただろうか。ほかの地で発表したものを、展示場所に最適なところを選んで展開しただけだろうか。文鳥はどういった理由で選定しただろうか。色彩が目立つ3羽のコキンチョウは、造形的なアクセントという理由で選定したのだろうか。リオや他の地でも同じように管理者を置いた動物取扱業なのだろうか。
私が、この記事を見てすぐ連想したのは辺野古沖のサンゴ礁と基地移転の攻防だ。基地と芸術を一緒にするなと怒りの声が聞こえてきそうだが、






「芸術作品」は観客が作る。

そして動物取扱責任者等専門家の指導のもと芸術は行われる。



http://ameblo.jp/tsubasa0615/entry-12209791139.html
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http://aichitriennale.jp/artist/lauralima.html
ラウラ・リマ Laura LIMA
1971年ゴヴェルナドル・ヴァラダレス(ブラジル)生まれ
リオデジャネイロ(ブラジル)拠点
リオデジャネイロにおいて哲学と視覚芸術を学ぶ。90年代半ばから、リマは自ら「イメージ」と呼ぶ一連の作品を生み出してきた。それは、今日まで彼女が繰り返し取り組んでいるさまざまな個人的な概念を、視覚的かつ具体的に見えるようにする試みだといえる。中でも象徴的な作品は、「Man-Flesh/Woman=flesh」という文言のもとにまとめられた作品群で、そこでは、人間と動物が単なる「もの(肉)」として扱われ、正確な指示書に従って行動するというものである。国内をはじめブエノスアイレス、メキシコシティ、チューリッヒなど各地で個展を開催している。
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http://aichitriennale.jp/info_lauralima.html
ラウラ・リマ《フーガ(Flight)》に関する鳥の取扱いについて

同作品の鳥の飼育につきましては、管理スタッフを配置し、動物取扱責任者等専門家の指導のもと毎日1時間程度の清掃及び週1回の休館日における集中清掃など適正な運営に配慮しているところですが、メール等により以下のご意見をいただき、以下のように対応しました。なお、一部未対応のものについては、早急に対応を検討し、決まり次第本サイトで状況をお知らせします。

主なご意見
①金網の隙間から逃げ出した鳥の保護が必要。合わせて金網の補修が必要。
②衰弱している鳥がいて、対応が必要。
③会期終了後の鳥の受入れ先の確保が必要。
④展示室内の衛生面の対応が必要。
⑤エサについて栄養価の高いものも必要。

ご来場の皆様へのお願い
ご来場の際には、受付で手指の消毒をお願いします。これは中にいる鳥たちの健康を守るためです。また、お帰りになる際にも必ず出口においてあります消毒薬で手指を消毒願います。これはご自身の健康とお家のペットを守るためです。
二重扉の間に靴底を消毒するマットがございます。恐れ入りますが必ず靴底も消毒をお願いします。同様にお帰りになる際も消毒をお願いします。理由は手指の消毒と同じです。何卒ご理解とご協力をお願いします。
他にも改善することが多々あると思います。何かございましたら1階に「ご意見箱」を設置しましたので、ご感想などをいただけたら幸いです。




今日も、野生化したインコやカナリアが群れを成して飛んでいる。