2023年4月24日月曜日

230424 蛙目粘土を買いに、からの、土鍋か電気自動車か

1987年頃、赤津



在庫の粘土が少なくなってきたうえに、今年になってやたらと原型の依頼が多く、しばらくなかった15㎝大の大きさのものもいくつか作成依頼があるので、品野の窯業原料屋さんに買いに行った。
最後の大学の授業の時もここで仕入れてたが、木節粘土水簸プレス1枚15kgで¥1,600-、在庫なくなり次第¥2,200-に値上げとのこと。(発送の場合、佐川の送料¥900-)
以前(といっても2015年くらいが最後だからもう7年前になるが)はアトリエ近くの鉱山に直接買いに行って蛙目粘土水簸プレス1枚300円くらいで5-6枚注文で運んでもらっていたが、さすがに一枚買うのに運んでもらうのもなんだし原付で行ったのだが、、、、
値段を見れば5倍~。・・・!






しかし事はもっと深刻で、土鍋の産地、萬古焼の危機につながるのである。




木節粘土・蛙目粘土


 この地方の原型師は、中国・ベトナムのようなワックス入り油土やフィギュア作家のようにオーブンを使うPVC素材のスカルピーなど使わない。陶磁器の型取り素材である石膏との相性や肌理の細かさが精細な彫塑に向くこと、表面仕上げの容易さ、何よりも直感的にサクサク作れることにより木節粘土、蛙目粘土を使用する。
 というわけで原型を作る材料として知った陶器用粘土「木節粘土」「蛙目粘土」。陶器の素地の生成に使われているだけと思っていたが、釉薬作成時にも使用する。よって窯業原料としては粉末でも売っている。
ガエロメネンド=蛙目粘土〈がいろめねんどとも呼ぶ)はカオリナイト鉱物を主成分とする花コウ岩,花コウ斑岩などを母材としてできた風化残留粘土で、粘土に含まれる石英粒子が雨にぬれ,カエルの目のように光るので,この名前が付けられたという。注1
 そしてこの蛙目粘土、萬古焼の土鍋などの耐熱陶器のプロダクトにはキーになる材料として登場する。土の産地→製品の産地であるから当たり前といえば当たり前ではあるが。

 低温の陶器は結構難しいプロダクトであると感じたのは、大陸の工場で生産を委託していた時に何度も経験した貫入や釉薬剥離、シバリング問題。基本的には生地の熱膨張率と釉薬の熱膨張率があってないことによるが、白雲(ドロマイト)や半磁器は本焼成温度が磁器ほど高くないため(釉薬と生地の融点が近いため)原料調合が難しいのだと直感的に感じていたが、温度管理は窯のどこにいれるか場所によっても異なるしその範囲の中で釉と生地の熱膨張率をコントロールするのはかなり繊細な感覚が必要だと思う。磁器などの本焼成が高温のものの方がある意味容易であるのだろう。
愛知県陶磁美術館にもある徳化窯の白磁観音像。宋時代に始まる中国白磁、明・清時代を通じて生産された徳化窯は中国を代表する陶都であるが現在の徳化は陶磁器全ての生産に優れているわけではない。磁器や白雲といった材質や温度の異なる陶磁器の生産で一時代を築いた愛知県瀬戸とはこの点が大きく異なると感じる。現在の徳化、中国福建省泉州市徳化県もまた陶磁器の産地の一つである。しかし、中国での低温の陶器、ドロマイト(白雲)は特に注意である。


土鍋か電気自動車か


 土鍋などは陶器と磁器の中間の半磁器という分類になっているが、食器カテゴリーでの製品に多いため、電子レンジやIH、直火対応など使用環境の過酷な熱環境に耐えなければならない品質が要求される。

土鍋で有名な四日市の萬古焼、昭和34年一部のメーカーではペタライトを陶土に40-50%配合することで低熱膨張性耐熱陶土の開発に成功したという。筆者自身80年代末頃には勤務先で土鍋の絵柄デザインに携わってたので四日市メーカーさんから来た素焼き生地に直接下絵付けしプロトタイプ作成したことを思い出す。(そういえば83年、初めて自身がプロダクトのデザインをした花器も四日市のメーカーさんで生産委託したものだった!ことを思い出したが、これはまた別の話)

ペタライト  Petalite(葉長石)LiAlSi4O10
発見は1800年、1817年この石からリチウム元素が発見される。

耐熱土、耐熱釉の調合に使用されるペタライトは携帯電話や電気自動車などへのリチウムイオン電池の需要で価格が高騰。(2017年¥100-/1kg が2023年には ¥1,000-/1kg に)
四日市にペタライトが入ってこず、一部メーカーはペタライトなしの耐熱陶器開発に向かっているという。
土鍋の生地には木節粘土や蛙目粘土が使用されている。そして蛙目粘土にはペタライトが混じっている。花コウ岩,花コウ斑岩由来の風化残留粘土である蛙目粘土であるから長石が混じってるのは当然といえば当然だ。しかし、ペタライトなしの開発には、あらかじめ蛙目粘土に入っているペタライト分を取り除かねばならない??・・・
 いずれにせよ、昨今の化石燃料燃焼によるCO2排出が目の敵にされ、(というか、排出量売買やゴミ輸出を見ればそのからくりが見える経済覇権争いのためのプロパガンダによって)電気こそがクリーンな未来を保証するというプロパガンダ。
「電気を制する者は世界を制す。」という流れの中、充電電池がキーになっている。


中国企業がアフリカ「リチウム鉱山」買収の背景
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2022/02/25 22:00


四日市のペタライト輸入先はジンバブエ、ブラジルからという。


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注1 :世界大百科事典 第2版 「蛙目粘土」の意味・わかりやすい解説
がえろめねんど【蛙目粘土】
〈がいろめねんど〉とも呼ぶ。カオリナイト鉱物を主成分とする花コウ岩,花コウ斑岩などを母材としてできた風化残留粘土。
粘土に含まれる石英粒子が雨にぬれ,カエルの目のように光るので,この名前が付けられた。おもに窯業原料として用いられる。
この粘土は,カオリナイト鉱物を主成分とする一次粘土(一次カオリン)であるが,石英,長石,絹雲母を多量に含むものもある。
蛙目粘土中の絹雲母は〈きら〉と呼ばれる。愛知県,岐阜県,三重県などに産する。

 

軟質粘土では亜炭片を含有するものを木節粘土(きぶしねんど)といい,粗粒石英を含有するものを蛙目粘土(がえろめねんど)といって,愛知県を中心に三重県,岐阜県などに産出する。蛙目粘土は粗粒石英を除くために水簸(すいひ)し,水簸粘土として使用される。…

【多治見[市]】より
…市域は土岐川沿いの平地と美濃三河高原の丘陵地よりなる。蛙目(がえろめ)粘土,木節(きぶし)粘土と呼ばれる良質の陶土を産するため,



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